Oligometastatic disease (オリゴ転移) とは?

オリゴ転移 (OMD) とは

オリゴ転移は"Oligometastatic disease (OMD)"を指し、
原発だけの限局性病態と遠隔転移などを伴った全身性病態の間にある概念である。

近年特に聞くことばであるが、今一度その概念を整理する。

ESTRO-EORTC consensus recommendations

1995年以降Hellmanらの提唱以降さまざまなOMD関連のpaperがでてきた

しかし、各報告や臨床試験によって定義が異なり、比較、解釈が困難であった。


2020年にOMDの定義をESTROとEORTCが整備したのだ。

Figure 3にあるように5つの問いによって9病態 (Figure 4) に分類した。

5 Questions

1. Polymetastatic diseaseの既往はあるか
2. Oligometastatic diseaseの既往はあるか
3. 原発がん診断後6ヶ月以降のOMD診断か
4. OMD診断時に全身療法中であるか
5. 直近の画像検索で進行病変があるか

9 States of OMD

De-novo OMD
1. Synchronous oligometastatic disease
2. Metachronous oligorecurrence
3. Metachronous oligoprogression

Repeat OMD
4. Repeat oligorecurrence
5. Repeat oligopersistence
6. Repeat oligoprogression

Induced OMD
7. Induced oligorecurrence
8. Induced oligopersistence
9. Induced oligoprogression

注意する点としては、
このESTRO-EORTC consensusはOligoCare project内で
OMDに対する metastases-directed radiotherapy (MDRT)の
有効性などを明らかにするために作成されたもの。

日常臨床での意思決定のために分類を使用することははすすめられてはいない。

MDRTとは

現時点で日本語で該当する言葉は決まっていない。
遠隔転移病巣の局所制御を目指した治療を指す。
したがって、放射線治療だけでなく手術やRFAなども含む言葉である。


ESTRO-ASTRO consensus

ESTRO-EORTC consensusはOMDを"分類"したものだが、
そもそもOMDをどう定義するかについて作成されたのがこのpaperである。
ここではOMDを1–5個の転移として定義している。
下に示すように6つのtopicsに分けて
16のconsensus statementsを記している。

1. Disease characteristics

原発腫瘍、組織型、転移部位は問わない
悪性胸水、がん性髄膜炎、腹膜炎は除外する
特異的なバイオマーカー、検査はない
PET/CT, CT (胸腹骨盤部), MR (脳、脊椎)による診断を推奨

2. Maximum disease burden

転移個数、転移部位では定義されない
  ただし5個を超える報告が少なくプロトコル外では"5"を上限とした
安全に"curative intent"な治療が実施可能
  「安全な治療が可能」は「治療すべき対象」と同意ではない
   安全でない場合は治療すべきではないということ

3. Timing of OMD development

原発腫瘍診断時との時期の違いで定義されるOMDがある
  "Synchronous"と"Metachronous" OMDのこと
遠隔転移を生じた時期の違いで定義されるOMDがある
  "Induced" OMDのこと

4. Relation of MDRT to other treatment

disease-freeの期間は問わない
treatment-freeの期間は問わない
全身療法中のoligoprogressionはOMDと概念、治療目的が異なる
polymetastatic diseaseは全身療法によりOMDとなる得る

5. Endpoints

MDRTの有害事象リスクは適応の判断に重要である
重要なEndpoint
  OS, DFS, PFS, LC, 有害事象, QoL, 全身療法の延期期間, 継続可能性

6. Impact of technology

SBRTなど適切な治療技術、方法が重要
OMDの局所制御にはBED10>100 Gyを支持
  今後変動する可能性がある

これらがTable 1に記されている。

これだけ整備されたが、
ようやく臨床試験のための環境整備をしただけであり、
今後の研究開発が注目される。
原発巣や所属リンパ節転移をどう扱うか、
脳転移をどう扱うかなどが今後の検討課題であろう。

原発、所属リンパ節転移については
"OligoCare trial"ではOMDとは区別している。

脳転移については従来はOMDとは区別してきたが、
言葉上は区別するのは違和感がのこる。

OligoCare trial

欧州🇪🇺を中心に2019年より開始した前向き観察研究である。
"ESTRO-EORTC pragmatic, observational basket study to evaluate radical radiotherapy for Oligo-Metastatic Cancer Patients"の通称である (NCT03818503)。

目的

1. 放射線治療を受けたがん患者の実データを収集
2. 安全性と有効性に影響を与える患者、腫瘍、治療の特性を明らかにする
3. 集学的アプローチにおける放射線治療の役割を示す証拠を見出す
4. DFS, LC, DMFS, OS, 有害事象の評価

対象

1000人
がん腫は問わない
手術歴、局所治療歴、放射線治療歴、化学療法歴は問わない

研究終了は2024年を予定しており結果発表が待ち遠しい。


所感
欧米のプラットフォーム構築の素早さには頭が下がる。
今後、学術発表・論文などでこの分類以外で発表することはルール違反扱いになるのだろうか。
個人的には悪性胸水、胸膜播種といったdiffuse diseaseは
日常臨床でもOMD扱いとしがたいと考えていたためconsensusといえど言及してくれたのは助かる。


OMDは
1. 原発、所属リンパ節、脳転移を除き5個以下の転移におさまるもの
2. diffuse diseaseは除外

MDRTは
1. 放射線治療以外に手術、RFAなど局所治療を含み
2. 安全に実施できることが大前提、しかし安全な治療が可能≠治療すべき
3. 定位放射線治療でBED10>100 Gyを目指す。

という感じでとらえておいて無難だろうと思われる。

とはいっても複数個あり定位照射できない部位があればhigh volume center紹介なのか?
特に肝臓の定位放射線治療自体、2021年でも実施可能施設まだまだ少ないようだからハードル高い。

あとOMD関連ではPIIのSABR-COMET trialは外せない。

このSABR-COMETの後釜として
3個までの転移病変を対象とした"SABR-COMET3"と
4–10個を対象とした"SABR-COMET10"が現在進行中で、
それぞれ2027年、2029年に終了する予定。