緩和照射/MDRT と 免疫チェックポイント阻害薬/分子標的薬の併用間隔

背景

分子標的薬 (TT) や免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) の登場により長期生存が望める患者が増えてきたことはよく知られている。 しかし、放射線治療とそれら薬剤の併用 (同時も異時も)については安全性についての情報が限られている。

よく知られているものにECOG consensus guidelinesがあり、


その中でBRAF inhibitor、MEK inhibitorと放射線治療の併用間隔について以下のように述べている。

1. 分割照射の場合薬剤投与との間隔は前後3日以上あける
2. SRSの場合薬剤投与との間隔は1日以上あける

この論文に関してerratumがでているのでそれも貼付しておく。

混沌とした日常臨床から 後方視的にもまとめづらい"併用間隔"については こうしたguidelinesがあれば有用なものの、2016年のこの論文以来 他薬剤で目ぼしいものはでていない。と思う

過去の報告


2018年のVermaらによるReviewや2019年のBangらによるものはICIとの併用でかなり有名なpaperだが、 特に時間間隔について言及しているわけではない。


もちろんこれらの論文のように安全性について突き詰めることも大事なことではある。


SRTとTT or ICIの同時併用に関する毒性Reviewは時に参照する。


あとpubmedにでてこない??
謎のpaper風PDFも時々みる。


紹介論文

Suggested approaches are described, using up-to-date literature, to aid clinicians in navigating the integration of newer targeted agents with hypofractionated palliative and/or ablative metastatic RT. Further prospective studies are required.

先のBangらが所属するCanadaのPrincess Margaret Cancer CentreからTT/ICIとの併用についてのpaperである。

BRAF/MEK阻害薬、EGFR阻害薬、ALK阻害薬、VEGF阻害薬、CDK4/6阻害薬、CTLA-4阻害薬などと放射線治療 (hypofractionated radiation therapy)との併用での毒性だけでなく、推奨する時間間隔が掲げられている。

放射線治療の線量/分割はmoderate (>2.2 Gy/fr)とultrahypofractionation (≥5 Gy/fr, ≤10fr)とSBRT (≤6fr)を解析の対象としている。

paper内の表のうち文中との乖離があった箇所は本表内で修正している。

所感

Guidelinesではないが、こうした報告は他の研究者・医師のおおまかな意識がわかってありがたい。そもそも間隔についての報告は少なく、多くの薬剤で半減期の5倍 (結構伝統的に使う?)を目安におおかたの予想通り決めている。
VEGF阻害薬の中でもとりわけBevacizumabの半減期は21日程度あり、それの5倍となると3ヶ月となるため流石に長いためか4週間としているがそれでも長く日常臨床で倣えるかというとあやしい。

VEGF阻害薬関連では緩和照射との併用による消化管毒性について報告したpaperもあり一読したい。

MurakamiらはRT前後1週間あけるといいのではと考察している。

おそらくこれもJROSGからとおもうが、最近CDK4/6阻害薬とのRTの併用についての論文もでた。


あったらいいなを抑えてくれた論文でした。 まずは前向きの観察研究での情報集積、解析が待たれます。