脳幹転移 定位放射線治療
背景
高い局所制御割合(81%)が見込め、
全脳照射の様な神経認知障害を起こすことは少なく
幅広く用いられている。
一方で脳幹転移はそもそもの所在そのものから
切除対象には適さないものの、
脳転移の定位放射線治療に関する
大半の前向き試験では脳幹転移は
除外されてきたのが実情だ。
しかし こうした背景があっても
日常臨床でのニーズがあり散発的に
脳幹転移定位放射線治療の報告がなされてきた。
過去の報告
比較的大きな報告の例としてはVirginia大学のものがある。
日本🇯🇵からの報告としては
この単施設がある。
紹介論文
全部で32の後向き研究 ("前向き"はゼロ)を対象に
脳幹転移定位放射線治療による
局所制御や生存割合、中枢神経死、有害事象
などを評価している。
患者・腫瘍データ
median 年齢 = 58
median KPS = 80
median f/u = 8.5ヶ月
原発疾患は肺45%, 乳20%, 黒色腫10%, 腎泌尿器7.5% (判明分のみ)
腫瘍体積 = 0.40cm3
GK, Liniac, CK = 74%, 17%, 9%
処方線量または辺縁線量中央値は
GK 16 Gy, Liniac 13.7 Gy, CK 17.5 Gy
結果
1年局所制御割合は 86%
1年,2年の生存割合は 33%, 13%
症状緩和割合は 55%
脳幹転移増大による死亡は 2.7%
中枢神経死は 24%。
Gr.3–5の有害事象は 2.4%
と"一般的な脳転移"に対する定位放射線治療よりも
線量が低いにもかかわらず、局所制御は高く、
有害事象の発生割合も許容内であった。
中枢神経死は"脳転移"定位放射線治療の
前向き試験での頻度と同等であった。
所感
脳幹転移はその場所だけで定位放射線治療を敬遠したくなる場所であるが、
意外と低い線量でも症状緩和や
高い局所制御が望めるようだ。
線量は単回なら15–18 Gyくらいで
実施しておくとよさそうだ。
今後、脳幹転移定位放射線治療の臨床試験が増えてくるのか??