中枢性肺がん 定位放射線治療


No-fly zone

2012年のNEJMの症例報告 (PMID: 22694017) をはじめ
中枢性肺がんに対する体幹部定位放射線治療は
末梢性肺がんよりも毒性が増す
ことが知らている。

TimmermanらによるPII study(60–66 Gy/3分割)
(PMID: 20233825) によれば重篤な有害事象が
末梢性の11倍認められ、

主気管支や葉気管支から2cm以内を
"飛行禁止区域 (No-fly zone)"と名付けた



Centralとは?

そもそも"中枢性肺がん (==central)"の
一般的に受け入れられている定義には大まかには
RTOGIASLCの2つがある。

RTOG definition

腫瘍が近位気管支 (気管、気管分岐部、左右主気管支、左右上下葉枝、中間幹、右中葉枝、舌区枝) から
全方向で2 cm以内
と規定。

IASLC definition

あらゆる縦隔リスク臓器 (気管支、食道、心臓、腕神経叢、大血管、脊髄、横隔神経、反回神経など) から
2 cm以内
と規定。

このように両者は微妙に指し示すものが異なっている。


ちなみにRTOG定義にでてくる近位気管支は
Proximal bronchial tree (PBT)と英語で称す。

"Central"の代表的論文

"Central"に関しては様々な
線量、分割回数、処方方法を用いた治療報告がなされてきた。

代表的な論文として
1. PMID: 19329210
2. PMID: 21892102
3. PMID: 22843088
4. PMID: 22265734
5. PMID: 24661665
6. PMID: 26472316
7. PMID: 25122433
などがある。

このように
かつてのchallengingな治療という段階から
各施設なりのルールで実臨床使用する段階に
遷移してきていると思われる。

JROSG10-1🇯🇵 (60 Gy/8分割)やRTOG0813🇺🇸(60 Gy/5分割)を意識して
線量、分割回数を決めているところも多いのではないだろうか
🤔しらないけれど


JROSG 10-1🇯🇵

Phase I試験で"Central" tumorの
SBRTの推奨線量、最大耐容線量を決定することを意図したものだ。
RTOG定義に基づく、3 cm以下の腫瘍を対象にし、MTDは60 Gy/8分割と報告した。

RTOG 0831🇺🇸


PhaseI/II試験で"Central" tumorの
SBRTの推奨線量、最大耐容線量を決定し、有効性、毒性を評価したものだ。

"Central"の定義はRTOG定義に少し追記されたものだ。
JROSG 10-1と異なり5 cm以下を対象としている。

結果はMTDは60 Gy/5分割で、
Grade3以上の有害事象は7%、
2年のLC, OSはそれぞれ87.9%, 72.7%と報告している。

Ultracentralとは?

中枢のより中枢・・・・という意味で、"Ultracentral"という概念もある。
"Ultracentral"は"Central"とは異なりコンセンサスを得られている概念はない
各臨床試験で設定しているのが現状だ。

参考程度に"SUNSET trial" (NCT03306680)では
PTVが近位気管支、食道、肺動静脈を接するまたは含むものと定めている。

この臨床試験のように"Ultracentral"を意識した
臨床試験報告や進行中の試験が散見されるようになってきている。

"Ultracentral"の注目論文

NORDIC HILUS trial

PBTから1 cm以内を"Ultracentral"
と定義・対象とし、

2グループにわけ、
56 Gy/8分割の照射を実施し、
照射後6, 12, 24ヶ月の局所制御をendpointとした。


6,12,24ヶ月のLCはそれぞれ95, 85, 83%、
Grade 3以上の有害事象は33.8%で認めた。

Grade 5は10例 (15.4%)あり、
全部肺関連の有害事象で
その大半 (8人/10人)はGroup Aに属していた


これらをふまえ
Group A (気管・主気管支から≤1 cm)に
56 Gy/8分割は適当ではないと結論
づけている。

Figure 3Cで示されている
主気管支に近いほど (< 1 cm)
有意にGr.5 出血
を認めた。

著者らは主気管支/気管のD0.2cc
致死的気管(支)肺出血の予測因子
としている。

今後の"No-fly zone"は
従来の2 cmから1 cm
となるのだろうか?
実臨床ですでに侵入してる気がする

注目の試験

VALOR trial

NCT02984761, 2027/09終了予定
主気管支からの距離1 cm以上離れていることを
条件にしている試験である。

SUNSET trial

NCT03306680, 2022/10終了予定
UltracentralへのSBRT MTDの結果が
待たれる試験である。