脊椎転移 定位放射線治療 –––SC.24

Conventional radiotherapy

転移性骨腫瘍による疼痛に対する
従来の外部照射では約60%に部分的または完全な疼痛緩和がえられ、
約20%で完全な疼痛緩和効果がみられる。

従来の外部照射では
分割回数を増やし、線量を増加させても
疼痛に対する完全な疼痛緩和効果を
示す割合は増えない
ことも示唆されており、

有痛性骨転移に対する外部照射は8 Gy/1回が標準とされている。

この疼痛緩和効果をさらに向上させることなどを目標に
北米🇺🇸🇨🇦を中心に体幹部定位放射線治療 (SBRT) が研究されてきた。

2021年06月 にLancet Oncologyより
CCTG SC.24/TROG 17.06 (以下SC.24)がpublishされた。

これは結果が注目されていた
脊椎転移SBRTに関するランダム化比較試験のひとつで、
ASTRO annual meeting 2020ですでに
SBRTの3ヶ月目の完全疼痛緩和割合の優越性が発表されていた。

殊、日本では2020年4月の診療報酬改定で
脊椎転移へのSBRTが適応となっており、
おさえておくべき臨床試験であろう。

CCTG SC.24/TROG 17.06



SC.24はカナダ🇨🇦、オーストラリア🇦🇺の18施設が参画したPII/III試験である。

PII部分はカナダのみでその実現可能性を確かめ、
PIII部分で有痛性脊椎転移へのSBRTの
従来型外部照射 (CRT: conventional radiotherapy)に対する
3ヶ月目のCR割合の優越性をみることをprimary endpointに設定した。


主なeligibility criteriaは
🟣固形がん由来の脊椎転移 (seminoma, SCLC除外)
🟣全脊椎MRがあること
🟣疼痛があること (BPIでの疼痛評価が≥ 2である)
🟣照射対象が最大で3連続椎骨以内におさまる
🟣ECOG PS 0–2
🟣SINS≤12
🟣過去のradiation, surgeryがないこと
🟣症候性脊髄圧迫、馬尾症候群がないこと

などである。


結果、3ヶ月目、6ヶ月目のCR (PRは含まない😲)割合は
SBRT群で有意に高い成績であった。

Grade 5の有害事象はなく、
最も多いものは「疼痛」でGrade 3がそれぞれ4% (CRT群), 5% (SBRT群)であった。
「椎骨圧迫骨折」は両群ともGrade 3が1%で認め、Grade 4は0%で、
「脊髄障害」はみられなかった。


本臨床試験は彼らの言葉通り
"First published randomised, controlled, phase2/3 trial"である。

エビデンスLevel IIの有痛性脊椎転移に対する定位放射線治療 (24 Gy/2)が確立されたのだ。
今後はがん種別の至適線量の探索、検証もされていくのだろう。


ASTRO2019で発表されRTOG 0631🇺🇸に関し pessimisticな空気の中
当時Dr. Sahgal(写真)はdiscussantとして

1. RTOG 0631における両群の特徴の違い (組織型、PSなど)
2. 計画での不適切な線量カバー (単なるBED10の違いではない)
3. 腫瘍要因ではない椎体の不安定性による疼痛が対象に含まれていること
4. SBRT群の55%が16 Gyであったことなど
を指摘し、SC.24🇨🇦🇦🇺の結果を待てと述べていたものだ。

で RTOG0631のpublishまだ❓

プロトコル

リンク先の下の方に"Study protocol"がある。

プロトコルのChapter 8には治療計画などについて詳述されている。
SBRTのみならずConventional RT (CRT)についても細かく取り決めている。

【CRT】
🟣CRTの輪郭入力
🔷GTV
MR画像を参考にCTで指摘可能な肉眼的病変。
🔷CTV
GTVを包含し、治療対象脊椎全体を含める (CTV1)。
傍脊椎病変が存在するとき解剖学的境界を意識し、病変から0.5 cmのmarginをとる。
上下の脊椎を含める必要がある場合はCTV2として設定する。
(注: プロトコルではCTV1, CTV2とは記載していないが、便宜上この表現とした。)
🔷PTV
PTV = CTV + 1–2 cm (marginは施設で異なる)。
線量データ報告のためにCTV1にもmarginを付加しPTVを設定する。
🟣CRTの線量分布計算
V95%≥99%。脊柱管内ではない限り処方線量の115%の最大点が認められる。
腎臓に遮蔽を要する場合、PTVを規定線量の85%でカバーすることを許容し、
許容される不均一性も規定線量の15%から+15%を許容するように調整してよい。
PTVが体表面から出る場合は体表面から5mm以内で引っ込める。
🟣リスク臓器-最大線量
🔷脊柱管 Dmax<22 Gy
🔷腎 D33.3%<20 Gy


【SBRT】
最低60分間は臥位がとれることが必須である。
疼痛や呼吸状態により困難であれば除外される。
🟣治療計画画像
治療計画用CTのスライス厚は2.5 mm以下とする。
対象となる椎体を含め頭尾側に少なくとも10 cmの長さを撮像する。
MRはT1, T2強調横断像、可能ならGd造影T1強調横断像を撮像する。
脊髄はMRで、thecal sacはMRIとCTで確認しながら輪郭入力する。
金属アーチファクトは水濃度に変換し、金属製インプラントは輪郭を整形し適切な密度を割り当てる。
🟣位置決め
CBCTに基づく画像誘導放射線治療が必要である。
🟣SBRTの輪郭入力
🔷GTV
CTとT1/T2強調画像MRで確認できる病変。
🔷CTV
International Spinal Consortium Guidline (PMID: 22608954) を参考とする。
硬膜外へ進展する病変の場合、硬膜外の部分の頭尾側方向へ5 mmのmarginをGTVに付加する (脊髄は除外)。
CTVをドーナツ様になることを推奨する。
傍脊椎病変がある場合GTVに最低5 mmのmarginを付加する。
🔷PTV
PTV = CTV + 1–3 mm (marginは施設で異なる)。
🟣SBRTの線量分布計算
PTVに点処方する。
Isodose、PTVの中央値や平均値に基づいて処方することも可能。
できる限りPTVが24 Gyでカバーされるようにする。
CTVでD80%≥24 Gyとなるようにする。
PTV D99%≥22.8 Gy (95%)となるよう-5%から+15%の線量不均一性を許容する。
腎を遮蔽する必要がある場合、PTVを-15%でカバーするとことを許容し、
その場合-15%から+15%の線量不均一性を許容する。
🟣リスク臓器
🔷脊髄
PRV = 脊髄 + 1.5–2 mm
PRV and/or thecal sac Dmax<17 Gy
🔷馬尾
馬尾の代わりにthecal sacを輪郭入力する。
thecal sac Dmax<17 Gy
🔷腎
Dmax≤26 Gy
Dmean≤6 Gy
🔷食道、胃、直腸、腸管
Dmax≤20 Gy
🔷気管
Dmax≤20 Gy
🔷肝
Dmax≤26 Gy
Dmean≤8 Gy
🔷肺 (左右それぞれ)
V10<10 br=""> V5<35 br=""> V20<3 br=""> Dmean≤5 Gy
🔷咽頭
Dmax≤20 Gy
Dmean≤9 Gy
🔷喉頭
Dmax≤20 Gy
Dmean≤9 Gy
🔷耳下腺 (左右それぞれ)
Dmean≤7 Gy
🔷その他
仙骨腫瘍(S1-S5)の場合、神経根は腹腔内に到達するまで輪郭入力する。
Dmax≤26 Gy


脊椎転移の定位放射線治療は
Oligometastatic diseaseの一環としても
注視しておきたい分野ですね。