子宮頸癌 傍大動脈リンパ節予防域

背景

2019年度の強度変調放射線治療 (IMRT)
国内実態調査アンケート報告🇯🇵によると
肺がん (定位以外) 🫁IMRTと並んで
順調に増えていたのが婦人科がん👩‍🍼IMRTのようだ。

詳細な内訳は不明だが、
多くは子宮頸がんの術後放射線治療と思われる。

国内ではなぜか遅々としてひろがらなかった
肺がん (定位以外)と同じように
子宮頸がんの根治的放射線治療でも
使用している施設は今後ますます増えることだろう。


IMRT使用は血液毒性、消化管毒性の低減が期待されるほか、
骨折のリスクが低いことが報告されている。
鼠径リンパ節領域照射や拡大照射では3次元放射線治療よりも治療時間短縮も望める。
もしVMATを用いればmonitor unitの減少がより狙える。

子宮頸がんの骨盤領域輪郭入力については
国内外で輪郭入力で
一定のコンセンサスを得た
方法がある。

相対的に傍大動脈リンパ節予防域に関しては
コンセンサスをえた輪郭入力方法があるとは言い難い。

過去の報告

ピッツバーグ大学🇺🇸
書籍 "Radiation Therapy Techniques for Gynecological Cancers:
A Comprehensive Practical Guide"の
著者に名を連ねる米国婦人科放射線治療分野を代表するDr.のひとり、
Beriwalら率いるグループから提言された
婦人科がんのPAN輪郭入力関連のpaperである。


アイルランド🇮🇪
FDG-PET-CTで同定できた病理学的に転移を確認した
PAN転移のある患者を対象に
CTVに臨床的に許容できる数のPANが含まれるようになるまで
marginを非対称に増やし、さらに別患者で検証し
PAN予防域のCTVのアトラスを作成したものである。


Fig. 2に実際のCTに彼らが提案するPAN予防域の作り方が描かれている。
大まかには次の7ステップである。

1. 下大静脈と大動脈を上限は左腎静脈、下限は大動脈分岐部まで別個に輪郭描出。
2. 大動脈周囲に拡大する。前方、後方、内側に10 mm, 外側に15 mmにmarginをつける。
3. 下大静脈周囲に拡大する。前方、内側に8 mm, 後方、外側に6 mmのmarginをつける。
4. 上記2,3で作成したstructureを合算 (CTV)し、リンパ節転移疑い病変も含める。
5. 椎体、筋、腸管との重なりは削り、後縁は椎体前部まで拡大する。
6. CTVよりL1-L2間より上縁のRPC領域を削る。
7. T12からL1/L2上縁でリンパ節転移がない患者や正常組織の毒性が懸念される場合はT12からL1/L2上縁を削る。

MD Anderson Cancer Center (MDACC) 🇺🇸

2012年, 2013年にpublishしたpaperでは
PETを用いてリンパ節転移の分布、それに基づいた予防域を提案している。

2016年に発売された
書籍 "Gynecologic Radiation Oncology: A Practical Guide"では
過去の研究をもとにPAN予防域を詳述している。
この書籍内のFigure 5.9では
傍大動脈リンパ節領域の定義について解説している。

大半の傍大動脈リンパ節転移は大動脈の左側か大動脈-下大静脈間にある。
ただし、下大静脈の右後側にみとめることもありその場合の多くは右腎静脈より尾側でみられることが多い (胎生期の非対称性な生長によるものである)。
第2腰椎レベルより尾側では腰筋内側がCTV外側のメルクマルになり、
第2腰椎レベルより頭側では腰筋は存在しないが大動脈から外側に1.5–2.0 cmは含めると良いとしている。
また、大動脈の前に直接リンパ節転移をきたすのは稀であることや、
左卵巣リンパ管は左腎血管の背側を通るためCTVは左腎血管より前には拡大しないことなどが述べられている。



このように主に具体的に予防域の提案までふみこんだのは
Keenanらアイルランド🇮🇪のグループと
TakiarらMDACC🇺🇸のグループ
からである。


紹介論文

2021年に子宮頸がん、子宮体がん術後放射線治療での
輪郭入力に関するNRS/RTOG🇺🇸のガイドラインが出ていて、
術後だけど予防域のコンセプトはさほどかわらないのでみておく。

ガイドラインによると、
子宮頸癌では一般的に左腎静脈の高さを上縁とする。
左側の境界は大動脈の1–2cm外側に位置する。
右側のCTVのマージンは、通常IVCの周囲3–5mm以内に収まる。

IVC右側、大動脈とIVCのすぐ前には、
転移があることはほとんどなく

マージンをより狭くすることなどが
"Para-aortic nodal CTV"の中で述べられている。

所感

Validation paperは3つほどある。 結局、PANの輪郭入力について見てきたが、
上縁の決まりや外側への拡大の根底にある知見は似たようなもので
これらを参考に施設ごとに決めていくのがよさそうだ。

というありきたりな結論?!😂