子宮頸癌 術後放射線療法

背景

日本では子宮頸がんのIIA期まででなく
IIB期までも手術対象とされることがしばしばみられ、
IB1–IIBの標準術式は"広汎子宮全摘出"である。

病理組織診断に基づいて再発リスク分類を行い、
リスク群に基づいて術後治療を行う。

国内では"再発高リスク群"は
"骨盤リンパ節転移陽性", "子宮傍組織浸潤陽性"の
いずれかの項目を満たすものとされる。

アメリカのガイドラインでは
これらに更に"腟断端陽性"が含まれる。

当然IIB期までも手術をおこなう日本では術後放射線治療患者は多くなる。
再発高リスク群の項目をいずれも満たさず、
"大きな頸部腫瘤", "深い頸部間質浸潤", "脈管侵襲陽性"の
いずれかの項目を満たすものという基準をもって
国内では"再発中リスク群"とすることが多い。

ただし、特に再発中リスク群については
臨床試験やガイドラインにより
基準がよく異なるので注意が必要で、

例えば"Sedlis criteria"👇では
"1/3以上の間質浸潤", "脈管侵襲あり", "4 cmより大きい頸部腫瘤"
を基準項目に含んでいる。


再発高リスク群への術後補助療法

SWOG 8797/RTOG 9112/GOG 109
IA2,IB, IIA期の骨盤リンパ節転移陽性、子宮傍組織浸潤陽性、腟断端陽性例の再発高リスク
を対象に行った3グループ合同のランダム化比較試験である。


術後放射線療法単独と術後化学放射線療法を比較し、
術後化学放射線療法群で全生存割合、無増悪生存割合が有意に高く、

この試験をもって再発高リスク群に対しては
術後化学放射線療法が標準治療
とされている。

このGOG 109は化学放射線療法でのレジメンがFP (1000/70)
と強力であることや晩期有害事象の評価がないという文脈で
しばしば批判される。

実際、本試験での化学療法 (FP)の完遂率は60%と低く、
実臨床ではweekly CDDPが幅広く用いられてきた

また、2005年にでたこの試験のsubgroup解析からは
2個以上のリンパ節転移や腫瘍の大きさが2 cmを超える場合こそ
全生存への寄与が大きいとされている。

Gr.3以上の急性有害事象をみると
化学放射線療法群で血液毒性/非血液毒性が83(68%)/61(50%)と
GOG 109採用の3DCRTでの化学放射線療法による毒性は強い。
特にGrade3以上の消化管毒性が10%前後でてしまうのはなかなか大変である。

シカゴ大学をはじめ
IMRTにより3DCRTより
急性期、慢性期とも消化管毒性が軽減できたとの報告がでてきて、
自ずとIMRT使用がひろまってきた。

PARCER trial

この臨床試験は2011–2019年に
インド🇮🇳のTATA memorial病院で実施された
PIIIのランダム化比較試験である。


子宮頸がん術後の再発中リスク群、高リスク群を対象に
3DCRTに対してIG-IMRTが消化管毒性の面で
優れているかを検証した。

再発高リスク群に該当すれば 同時併用化学療法が推奨され、
外部照射は50 Gy/25分割、
小線源治療は高線量率腔内照射を12 Gy/2分割実施した。

観察期間の中央値は46ヶ月とほぼ4年で、
3年のGrade2以上の晩期消化管毒性については
3DCRT群が42.4%であるのに対して、IMRT群が21.1%と有意に改善を認め、最近臨床試験によく採用されるPROでも同様の結果が確認できた。

IMRT群は全生存や骨盤内制御などにおいても3DCRT群と全く遜色ない結果であった。

所感

PARCER trialの結果、
子宮体がんも含まれるNRG1203 (TIME-C trial)と合わせ、
子宮頸がん、子宮体がんの標準術後放射線治療として
IMRTが確立されたものになったと評されるだろう。

JCOG1402含め、
今後注目しておきたい臨床試験として

GOG263: 再発中リスク群のRT vs. CRT (2021/12終了予定)
RTOG 0724: 再発高リスク群のCRT vs. CRT f/b CT (2026/08終了予定)

がある。