脊髄圧迫 5 Gy x5 or 3 Gy x10

背景

脊髄圧迫 (Malignant spinal cord compression: MSCC)は
がん患者のうち2.5–10%で見られ、
迅速な診断と治療介入を要することもしばしばある。

背部痛が最もみられる症状 (83–95%)で、
その他、下肢筋力低下、感覚障害、自律神経障害 (排尿排泄コントロールなど)
が挙げられる。

部位別には胸椎 (59–78%)>腰椎 (16–33%)>頸椎 (4–13%)である。
緊急性の高いMSCCが強く疑われる場合は
全脊椎MRを行うべきとされる。

また最近の画像がない場合は
臓器転移の有無を検索しておくことが適切とされ、
SINS≥7であれば外科コンサルトを考慮することが多い。


SINSとはSpinal instability neoplastic scoreの略で
脊椎の不安定性を測る。

評価対象の部位、疼痛、対象の画像所見、脊椎の配列、椎体の破壊の程度、側方後方成分への進展の程度から点数付けを行い、その加算により求める。

SINSが6点以下を低リスク、7–12点を中間リスク、13点以上を高リスクと呼ぶ。

MSCCの定義は文献により様々であるが、
多くの臨床試験を見ている限りでは
Bilsky gradingでGrade1以上を目安にMSCCと扱ってよさそうだ。
Grade 1だと"compression"していないが。

臨床試験はじめpaper, テキストなどではMSCCはBone metastasesと明確に区別した扱いである。

Grade 0は"骨皮質内に限局した腫瘍"、
Grade 1は"硬膜外腔に浸潤"であり、
Grade 1aは"硬膜外腔に浸潤するが硬膜には接しない腫瘍"、
Grade 1bは"硬膜に接するが脊髄には接しない腫瘍"、
Grade 1cは"脊髄に接するが脊髄を圧迫または変形させない腫瘍"と細分化される。
Grade 2は"脊髄を圧迫するが同部位において髄液が画像上確認できるもの"、
Grade 3は"脊髄を圧迫し同部位において髄液が画像上確認できないもの"を指す。


MSCCに対する適切な線量/分割は不明であり、8x1, 8x2, 4x5, 3x10と様々である。

過去の報告

1️⃣SCORE-1 study
👉長期予後がみこめれば 3 Gyx10がよく、短期予後なら4 Gyx5または8 Gyx1でよいとした研究

非ランダム化前向き研究でshort course (8 Gyx1, 4 Gyx5)とlong course (3 Gyx10, 2.5 Gyx20, 2 Gyx20)を比較したものである。
Long course群で局所制御に優れ、運動機能の改善は両群で変わらなかった。



2️⃣SCORE-2 trial
👉短期予後みこみであれば 4 Gyx5は3 Gyx10には劣らないとした研究

ランダム化介入試験で脊髄圧迫に対して3 Gyx10と4 Gyx5を比較した試験である。
奏効率、OS、歩行可能割合などは両者で変わらない結果であった。



3️⃣PRE-MODE trial
 👉5 Gyx5は4 Gyx5 より局所制御はいいかも?とした研究



紹介論文



MSCC界?で特に有名な Lübeck univ.のDr.Rades🇩🇪のもので、
SCORE-1, SCORE-2, PRE-MODEの3つのstudyを元に5x5と3x10を比較したshort reportである。


これらPRE-MODE(5x5)とSCORE-1, SCORE-2の3x10のグループで、
"Tumor type", "Ambulatory status", "Time developing motor deficits", "Interval between Dx and MSCC", "Visceral mets"などの項目で
matchさせ両者を比較したのがpaperの概要だ。

6ヶ月時点でのLPFS, OS, 奏効率などは両者で有意差を認めず、
運動機能改善については5 Gyx5が有意差をもって優れていた。

👉5x5と3x10の効果は同等であるとし、長期生存患者に対してはランダム化比較試験で検証すべきとしている。